最初に決めるのは、判断する人と範囲
与信管理の仕組みをつくるときは、調査項目を増やす前に、誰がどの判断をするかを決めます。営業担当者だけで取引開始を決めるのか、一定額を超える場合は管理部門や経営者が承認するのか。承認の境目が曖昧なままでは、情報を集めても判断が担当者ごとに変わります。
新規取引、取引額の増額、支払条件の変更、入金遅延後の追加受注では、見るべき情報と判断の重さが異なります。すべてを同じ手続にせず、会社の取引規模と担当体制に合わせて承認経路を決めることが出発点です。
取引前にそろえる情報
取引先の会社情報、事業内容、所在地、請求先、担当窓口を確認します。そのうえで、想定する取引金額、納品から請求までの流れ、支払期日、入金方法を見ます。決算書や信用調査の情報がある場合も、それだけで結論を出さず、実際の取引条件と合わせて読みます。
確認した情報は、担当者のメールや個人フォルダだけに残さず、承認した条件と一緒に社内で参照できるようにします。後から取引額が増えたとき、当初どの前提で始めた取引だったかをたどれることが大切です。
与信枠と支払条件を一緒に考える
与信枠は、取引先ごとの上限額です。ただし、月間売上だけで決めると、締日と支払期日の関係によっては売掛金残高が想定以上に膨らみます。現在残高、今後の受注予定、入金までの日数を見て、どこまで残高が増えるかを考えます。
現金取引、前受金、月末締め翌月末払いなど、支払条件によって同じ売上でも資金負担は変わります。上限額と支払条件を別々に決めず、回収までの期間を含めて確認します。
入金が遅れた後の役割
入金遅延が起きてから担当者を決めると、初動が遅れやすくなります。誰が請求内容と入金状況を確認するか、誰が相手先へ連絡するか、どの時点で経営者へ報告するかを決めておきます。追加受注を続けるかどうかの判断者も必要です。
契約や請求内容に争いがある、法的な請求や代理交渉が必要といった場合は、弁護士などの専門家へ相談します。社内の与信管理は、専門判断を代替するものではありません。
判断の理由を残す
承認結果だけでなく、どの資料を見て、どの条件を前提に判断したかを記録します。たとえば、与信枠を増やした理由が受注増加なのか、入金実績の改善なのかで、次に見直すときの確認点が変わります。例外対応を認めた場合は、期限と再確認日も残します。
記録項目を増やしすぎると、現場で使われなくなります。すべての取引先に同じ量の資料を求めるのではなく、取引額、支払までの期間、過去の実績に応じて確認の深さを変えます。必要な情報が不足している場合に、誰が追加確認するかも決めておきます。
営業、経理、経営者がそれぞれ持つ情報を一か所で確認できれば、入金遅延が起きた後に取引の前提を探し直す時間を減らせます。
見直しのきっかけを決めておく
与信枠や取引条件は、一度決めて終わりではありません。取引額の増加、支払日の遅れ、条件変更の申し出、相手先の業況変化などを見直しのきっかけにします。定期見直しに加え、変化が起きたときに確認できる運用が必要です。
当社の与信管理体制構築コンサルティングでは、取引前の確認項目、与信枠、取引条件、入金遅延後の担当者と対応手順を、社内で使える基準として検討します。