弊社では、与信管理の相談を受けた際、信用調査の項目を増やす前に「誰が新規取引を承認するのか」から入ります。取引先の情報を集めることと、その情報を使って社内で判断することは別だからです。

営業担当者が取引を進め、管理部門が売掛金を確認し、最終的な条件変更は経営者が決める。会社によって役割は違いますが、誰がどこで判断するかが決まっていないと、入金が遅れたときに初めて社内調整が始まります。

調べることを増やすより、迷ったときに誰が決めるかを先に決める。

社内で先に決めておきたい4つ

  • 新しい取引を始めてよいか、誰が承認するか
  • 与信枠を超える注文を受けるとき、誰に確認するか
  • 支払期日を過ぎたとき、いつ・誰へ報告するか
  • 取引条件の変更や追加受注の停止を、誰が決めるか
新規取引・追加受注前の与信確認チェックリスト 1ページ目

信用調査の結果や売掛金残高に変化があったとき、誰へ報告し、誰の承認を受けるかまでを社内ルールに含めます。

与信判断記録で残す項目
項目記録する内容次に見るタイミング
判断日新規取引・追加受注・条件変更を判断した日次回見直し日
現在残高基準日時点の売掛金・貸付金残高追加受注の前
入金状況支払期日、直近入金日、遅れの有無支払期日を過ぎた時点
承認者判断を行った役割・責任者条件を変えるとき
判断理由使った資料と採用した取引条件担当交代・再審査のとき

残高だけでなく、いつ・誰が・何を根拠に決めたかを一組で残します。

与信枠は、月間売上より最大残高で考える

月100万円の売上でも、支払条件が翌月末で、その間に次の注文が入れば売掛金は100万円では収まりません。弊社では、現在残っている売掛金、次の入金予定日、追加受注後の残高を同じ時点に置いて比べます。

前受金や現金取引を一部組み合わせる場合は、同じ売上規模でも自社が負担する金額は変わります。与信枠は売上目標から逆算するものではなく、入金までに自社がどこまで信用を供与するかという社内基準です。

入金が遅れた後に、判断ルールを作らない

支払期日を過ぎたときに、営業は「もう少し待ちたい」、管理部門は「追加受注を止めたい」と考えることがあります。意見が分かれたときの承認者と判断する時点は、取引を始める前に決めておきます。

契約内容に争いがある場合や、法的な請求、代理交渉が必要な場合は弁護士などの専門家へ相談します。与信管理は、その前段階で取引条件と社内判断をそろえるための仕組みです。

判断理由を、次の担当者へ渡せる形で残す

承認の有無だけでは、後から条件を見直すときに当時の判断材料が分かりません。判断日、承認者、使った資料の基準日、採用した取引条件、次に見直す時点を一組で残します。

入金が遅れた取引先へ追加受注を認めるなら、何を根拠に認めたか、どの条件が変わったら再度判断するかも記録します。結論と理由を分けて書くことで、担当者の交代後も判断の経緯をたどれます。

信用調査の結果が良ければ、支払条件はそのままでよいですか。

調査結果だけで決めず、自社との取引残高、入金の遅れ、追加受注後の負担を合わせて考えます。残高の読み方は債権残高の用語解説で扱っています。

判断記録には、すべての資料を転記しますか。

元の資料への参照と、判断に使った点を残す方法があります。資料の基準日や担当が分かるようにし、社内で必要な人がたどれる保存先を決めます。