弊社がM&Aの資料を扱う際、売掛金や貸付金を残高だけで判断することはありません。同じ500万円でも、翌月の入金が確認できている売掛金と、長期間動いていない売掛金では、検討の仕方が変わるからです。

貸借対照表は入口です。その後に明細を開き、誰に対する債権なのか、いつ発生したのか、支払期日はいつか、これまでの入金や返済はどうだったかを確認します。

売掛金・貸付金DDの引継ぎ表
対象状態次に見る資料判断メモ
売掛金残高資料あり / 資料不足 / 判断保留残高明細・請求書・入金履歴基準日と入金予定
貸付金資料あり / 資料不足 / 判断保留契約書・返済予定・返済履歴返済条件と実績
長期滞留資料あり / 資料不足 / 判断保留取引経緯・連絡記録例外として引き継ぐ事項
基準日の差資料あり / 資料不足 / 判断保留各資料の作成日・対象期間同じ基準日に置く対象

資料がないことを「問題なし」に置き換えず、資料不足と判断保留を分けて引き継ぎます。

売掛金は、契約から入金までを一本につなぐ

契約、受注、納品・検収、請求、入金の資料を並べます。値引き、返品、相殺があれば、その処理が帳簿にどう反映されているかも確認します。

長く残っている売掛金がある場合は、「回収できる・できない」とすぐに結論を出すのではなく、なぜ残っているのかを確認します。単なる支払サイトの長さなのか、入金が遅れているのか、請求内容に認識差があるのかで意味が違います。

貸付金の返済条件と、その後の入金

貸付金では、契約書、貸付日、返済期日、利率、担保・保証の有無に加え、これまでの返済実績を確認します。役員や関係会社への貸付であれば、貸付が発生した背景も確認対象になります。

株式譲渡後に誰が債権を持つのか、クロージング前に返済するのかといった点は、譲渡条件と切り離せません。

資料の基準日が違えば、数字は合わない

財務資料、売掛金台帳、貸付金明細の基準日がずれていると、同じ会社の資料でも数字は一致しません。弊社では、先に基準日をそろえ、その後の入金や新しい請求を別にします。

売掛金や貸付金の確認は企業価値評価そのものではありません。ただ、資産の中身が分からないままでは、譲渡価格やクロージング前後の処理を具体的に検討できません。

契約解釈、法的な回収可能性、税務上の取扱いには専門判断が必要です。弁護士、公認会計士、税理士などと確認すべき事項を分けて進めます。

合計が合った後も、例外を引き継ぐ

基準日をそろえて残高が一致しても、長く入金がないものや、条件が途中で変わったものは別に残します。対象の債権、該当する資料、基準日、分かっている経緯を一組にすると、次の担当者へ論点を渡しやすくなります。

不足資料には、その資料で何を知りたいのかと対応する担当を添えます。入手できていない事実を、問題がないという意味へ置き換えないことが大切です。

帳簿と明細の合計が合えば、債権の検討は終わりですか。

合計の一致と、契約や入金経緯の読み取りは別です。資料を引き継ぐ段階では、債権残高の内訳と例外を分けます。回収可能性の評価、会計・税務処理、契約上の扱いは、資料の突合だけで結論を出さず、各分野の担当者・専門家と検討します。