東京商工リサーチが9月8日に公表した、2026年8月の全国企業倒産は830件でした。
前年同月より3.1%多く、前年を上回るのは3カ月連続です。
ただ、7月は1,028件でした。
8月だけを見て、「倒産が急増している」と捉える数字ではありません。
一方で、負債1億円未満の倒産は635件。全体の76.5%を占めています。
従業員10人未満の企業も90.3%でした。
中小企業との取引が多い会社であれば、気になるニュースだと思います。
では、取引先を一斉に見直すべきか。
そこまでは考えません。
全国で830社が倒産したことと、目の前の取引先の信用状態は別の話だからです。
私なら、まず売掛金台帳を開きます。
売掛金500万円。気になるのは残高より、増え方です
たとえば、月末の売掛金残高が500万円ある会社を考えます。
毎月500万円ほど請求し、翌月末にはほぼ全額入金されている。
それなら、500万円という残高自体に特別な意味はありません。
一方で、
3カ月前は300万円。
先月は400万円。
今月は500万円。
こうして残高が積み上がっているなら、話は変わります。
同じ500万円でも、中身はまったく違います。
売掛金台帳だけでは分からないこともあります。
請求書を見る。
銀行口座の入金履歴を見る。
一部だけ入っているのか。
値引きや返品があったのか。
相殺されているのか。
どの請求が残っているのかまで追うと、その500万円がどうできたのかが見えてきます。
決算書や信用調査会社の情報も使います。
ただ、自社との取引で既に起きている変化は、それとは別に見た方がいい。
入金が遅れている。それでも注文は入ります
与信管理で迷うのは、取引開始時より、むしろ取引が続いている相手です。
支払期日を過ぎた売掛金が200万円残っている。
その会社から、新しく300万円の注文が入る。
営業からすれば受注です。
経理から見ると、未入金200万円の上に、さらに売掛金が増える話です。
この場面で「受ける」「断る」だけを考えると、判断が荒くなります。
いま200万円残っている。
今回の注文で300万円増える。
次の入金予定はいくらか。
もし予定どおり入らなければ、残高はいくらまで増えるのか。
そこまで見てから、誰が判断するかを決めます。
営業担当者だけで進めるのか。
一定額を超えたら、管理部門や経営者まで上げるのか。
与信枠は、取引先を締め付けるためだけのものではありません。
営業と経理が、同じ数字を見て話すためにも使えます。
近畿は232件でした
8月の近畿地区の企業倒産は232件。
前年同月比28.1%増です。
近畿の建設業は52件で、前年同月比85.7%増でした。
当社は大阪・兵庫を中心にご相談を受けていますので、この数字は目に留まります。
ただ、建設業の倒産が増えたから、建設会社への与信を一律に厳しくする。
そういう使い方はしません。
元請なのか、下請なのか。
工期はどれくらいか。
請求から入金まで何日あるのか。
材料費や外注費を先に負担するのか。
同じ業種でも、資金の動きは会社ごとに違います。
倒産統計は、取引先を判定する答えというより、
「最近、取引条件に何か変化はなかったか」
と見直すきっかけとして使う方が実務には合います。
「今月だけ、1週間待ってほしい」
実際の取引では、こういう話が突然出ます。
一度だけで、その後は元に戻る会社もあります。
翌月も遅れる会社もあります。
その次には、分割払いの相談になることもあります。
最初の1週間だけを切り取れば、大きな問題には見えません。
なので、口頭で終わらせない。
いつ言われたのか。
誰から言われたのか。
理由は何だったのか。
それだけでも残しておきます。
後から見ると、最初の変化がそこだったと分かることがあります。
与信管理は、取引先に「安全」「危険」と札を貼る仕事ではありません。
昨日までと何が変わったのか。
変わったなら、これまでと同じ条件で取引を続けていいのか。
その都度、考え直せる状態にしておくことの方が大切です。
売掛金が長く残ったら
支払期日を過ぎたからといって、すぐに債権売却を考える必要はありません。
まず、ここまでの経緯を並べます。
契約書。
発注書。
納品や検収の記録。
請求書。
入金履歴。
相手先とのメールや連絡記録。
それを見たうえで、
取引を続けるのか。
追加受注を止めるのか。
専門家へ相談するのか。
債権を売却できるか確認するのか。
次の選択肢を考えます。
契約解釈、法的請求、代理交渉などが必要な場合は、弁護士などの専門家の領域です。
当社が第三者の債権回収を代行することはありません。
当社では、売掛金や貸付金について、発生した経緯、契約・請求資料、これまでの入金状況などを確認したうえで、債権買取の可能性を検討しています。
全国の企業倒産が830件だった。
そのニュースだけで、自社の取引先を疑う必要はないと思います。
ただ、売掛金台帳を開いたとき、
先月より残高が増えている会社がある。
そこは、一度見ておいた方がいい。
見るのは倒産件数ではなく、
その残高が、なぜ増えたのかです。